「高さ610m 幻の代々木タワー計画」について

今から約40年前に、2本の600m級タワーが計画されていたことは、以前「幻のタワー計画 高さ550mの正力タワーと高さ600mのNHKタワー」(2011年2月)という記事で触れました。

○「幻のタワー計画 高さ550mの正力タワーと高さ600mのNHKタワー」 

https://aosawa.wordpress.com/2011/01/11/

この記事を書いた段階では、NHKタワーに関する情報が少なかったために、計画の詳細にはほとんど触れませんでした(1969年7月時点の発表では、NHKの敷地内に600m級の4本脚のタワーをつくるというもの)。

しかし、その後の追加調査で、この時点でNHKが発表した計画はまだ初期段階のものでしかなく、その後、高さ610mのタワーが代々木公園内に計画されていたことが明らかになりました。

しかも、構造設計は、高層建築時代を切り開いた武藤清東大名誉教授の武藤構造力学研究所が関わり、タワーの意匠は、ヨーン・ウツソンやオブ・アラップの助手としてシドニーオペラハウスの設計に従事し、帰国したばかりの三上祐三氏が担当していたことも分かりました(三上氏は渋谷の東急文化村オーチャードホールの設計者でもあります)。

詳細については、AERA(2012年7月16日号)に掲載されましたので、こちらを是非ご覧ください。

○幻の代々木タワー計画(編集部山下努 東京工業大学大学院大澤昭彦)

ちなみに、610mという高さは、電波送信の技術的な観点から決まったそうなのですが、610mは語呂合わせでムトウ(6・10→ム・トウ)とも読めるため、武藤清の名前から高さが決まったのではないかと妄想してしまいました(この説は全く根拠がありません)。

分量が限られているため、すべてを盛り込むことはできませんでしたが、詳細な内容については別の形で公表をしたいと考えています(どういう形で公表するかは未定です)。

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「高さ610m 幻の代々木タワー計画」について」への6件のフィードバック

  1. 初めてコメントいたします。
    まったく建築の心得のない者ですが、美しい建築物が大好きです。
    偶然に読んだAERAで、代々木タワー模型写真の、あまりの美しさに感動し、このページを見つけ、過去の記事も拝読しました。
    代々木公園の緑の中に白いあの美しい曲線のタワー、丹下健三のオリンピックプールとの視覚的なハーモニー。素敵だっただろうと夢想いたしました。
    建築家や関係者の方も、子供のようにワクワクする気持ちで計画を進めていたのではないでしょうか。
    正力タワーとのことも、子供じみた競争のようにも感じ、当時の大人は現代よりも少年のような心をもったロマンチストだったのかも、などと勝手な感想を持ちました。
    過去の資料など、調査・研究も大変な努力の必要なことだったと存じます。
    貴重な記事が読めた私は幸せです。
    詳細な内容の公表をなさりたい、とのことですが、ぜひ拝読したいと存じます。
    このページを拝見していればよろしいでしょうか。
    今後もご活躍をお祈りいたしております。

    • ゆめこ様

      コメントありがとうございます。いただいたお言葉は大変励みになります。

      私もゆめこさんと同じく、タワーの模型写真の美しさに感動した一人です。
      設計者である三上さんのご自宅で、はじめて模型写真を見せていただいた時は驚き、「これは絶対に公の記録として残さなければ」と勝手な使命感のようなものを抱きました。
      そして、運よくアエラの山下記者をはじめ編集部が関心を持ってくださり、今回記事として「記録」されることになったわけです。

      このブログのタイトルが「高さ制限とまちづくり」であることからわかるように、私は良好な景観や住環境をつくるためには建物の高さを適切にコントロールすべきとの考えを持っています。
      しかし、闇雲に高さを抑えればよいというわけではないことは言うまでもありません(闇雲に高いものが建つべきではないのと同じように)。
      建物の高さには様々な役割や機能がありますが、その一つとして、ランドマークとして都市のシンボルになることがあります。
      代々木タワーの模型写真や図面を見たとき、「都市にランドマークとはどうあるべきなのか」との問いに対する回答の一つを見せられた思いでした。
      超高層建築物をつくる際は、ランドマークとしてふさわしいデザインの質が求められると同時に、周辺環境との関係も非常に重要です。
      その点、代々木タワーはデザインの美しさはもちろん、公園内という環境との調和、さらには丹下健三とのデザイン的な響きあいまで、考えに考え抜かれたものになっているように思います。

      こうした三上さんの設計思想の原点には、イギリスのダラムという中世の歴史的都市で、警察署の電波塔(高さ50m)を設計した際の経験があるのではないかと考えています(オブ・アラップの構造設計事務所に在籍時の仕事で、代々木タワーのB案の原形とも言えるデザインです)。
      もともと歴史的環境・景観との調和を重んじるイギリスですので、大聖堂の高さを超える電波塔の設計にあたっては、市当局などと何度も議論を重ねて、デザインの検討をしたそうです。
      歓声から40余年を経た現在、その塔は国の文化財に指定されています。また、今年に入り、老朽化した警察署の移転が決まったのですが、電波塔は壊されることなく、新しい敷地に移築されることになっています。

      代々木タワーを巡っては、こうした建築史的な物語に加えて、NHKと日本テレビとの間のメディア戦争という側面、さらには代々木公園の開設やNHK放送センターの建設過程における政府、東京都、NHKの三つ巴の駆け引きなど、様々な要素が複雑に絡んでいます。
      いわば、「代々木タワーを巡る戦後昭和史」と言ってもよいほどの大きな物語が展開しているのです。
      この幻のタワー計画を通じて戦後昭和史を捉えなおすことができるのではないかとも考えています。

      模型写真や図面もまだまだたくさんあり、三上さんへのインタビューも長時間にわたり行っています。タワー計画の背景となる部分の調査もだいぶ進んでいるところです。
      記事では書ききれなかった内容は、何らかの形で公表したいと思い、準備を進めています。
      ただ、著作権等の都合もありますので、このホームページではなく別の形になります。
      具体的なことは一切決まっていませんが、決定次第、こちらのページでお知らせしますので、いましばらくお待ちください。

      今後ともよろしくお願いいたします。

      大澤昭彦

  2. 大澤昭彦様

    早速のご丁寧なお返事、ありがとうございました。
    大変勉強になりました。
    美しい幻のタワー計画の裏にそんな物語があったのですね。とても惹きつけられました。
    ダラムの警察署の電波塔も見てみたく、興味が広がりました。

    代々木タワー計画について、何かの形で発表されることがありましたら、必ず拝見いたしたく思います。

    こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。

  3. 大澤昭彦様

    ダラムの電波塔の写真、ご教示頂いたURLで見られました。
    シンプルで美しい形ですね。
    文化財に指定し、移築するイギリスの意識の高さも素晴らしいと思いました。

    私は、小さいころからなぜか「たてもの」が好きでした。
    あのビルの窓が良いな、中に入ったらきっと少しひんやりして、内装はこんなかな、間取りは・・・中からの景色は・・・、勝手にいろいろ考えていました。
    外から見た感じと、中に入った時の印象が違う建物にはドキドキしました。
    建築を勉強したことは一度もありませんが、名建築の写真集を見るのが趣味で、時間を忘れてうっとりと眺めています。

    偶然に銀行の待ち時間にAERAを読んで代々木タワーのことを知ったことで、このページを見ることができ、いろいろと教えていただきました。
    また、改めて国立代々木競技場の建築美や代々木公園の緑の豊かさにも気付かされましたし、大変に興味が広がりました。
    心よりお礼を申し上げます。

    今後もこちらでいろいろとお教えいただきたく存じます。
    大澤様のご健康とご活躍を心よりお祈りいたします。
    ありがとうございました。

    • ゆめこ様

      いつ、どこで公表するかは未定ですが、代々木タワーについて発表する際はお知らせいたします。
      今後とも建築に興味を持っていただければ幸いです。また、建築だけでなく街並みや都市にも関心を持っていただければ、なおうれしいです(日本に美しい街並みは少ないですが、、、)。
      今後ともよろしくお願いいたします。

      大澤昭彦

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