『高さ制限とまちづくり』出版のお知らせ

このたび、拙書「高さ制限とまちづくり」(学芸出版社)が発売されましたのでお知らせします。

本書の内容は、我国における建築物の高さ制限の歴史的変遷にはじまり、高度地区(都市計画法)と景観計画(景観法)を活用した高さ制限の運用実態を概観したうえで、これらの制度を用いた全国20自治体の具体的な事例をまとめています。そして最後に、高さ制限の意義や制度の活用にあたってのポイントを整理しています。

高さ制限の歴史から実態までを網羅的に紹介した本書は、地域の景観や環境保全に取り組む市民や自治体関係者など、都市の高さのあり方に関心を持つ方にとって参考になると思います。是非ご一読ください。

◇詳細は学芸出版社のホームページをご覧ください(目次、序文、あとがきが読めます)。

「高さ制限とまちづくり」 大澤昭彦 著 学芸出版社 3700円+税

http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-3210-9.htm

 

<高さ制限とまちづくり:目次>

序 なぜ高さ制限は必要か

第1章 高さ制限の歴史的変遷

1 戦前における高さ制限(市街地建築物法下の高さ制限)

2 戦後における高さ制限(旧建築基準法下の高さ制限)

3 高度成長期における高さ制限(容積制全面導入後の高さ制限)

4 安定成長期における高さ制限

5 バブル経済崩壊以降の高さ制限

6 歴史的変遷からみた高さ制限の特徴

第2章 高さ制限の実態と課題

1 高さ制限の手法とその課題

2 絶対高さ型高度地区を用いた高さ制限の実態と課題(事前確定型高さ制限)

3 景観計画を用いた高さ制限の実態と課題(行政指導型高さ制限)

第3章 高さ制限を活用したまちづくりの事例

1 古都の景観保全のための高さ制限:京都市/大津市

2 城下町の景観保全のための高さ制限:松本市(松本城周辺)/佐賀市(佐賀城公園周辺)

3 庭園・社寺の眺望景観保全のための高さ制限:東京・北区(旧古河庭園)/宇治市(平等院周辺)

4 門前町等の歴史的街並み景観保全のための高さ制限:伊勢市(伊勢神宮周辺)/太宰府市(太宰府天満宮周辺)

5 水辺の景観保全のための高さ制限:諏訪市(諏訪湖・高島城)/犬山市・各務原市(木曽川周辺)

6 山の眺望景観保全のための高さ制限:鹿児島市(桜島・城山周辺)/岐阜市(金華山・長良川周辺)

7 都心景観の保全・創出のための高さ制限:東京・中央区(銀座周辺)/大阪市(御堂筋周辺)

8 大都市における住環境・景観保全のための高さ制限:東京・新宿区/札幌市

9 都心近郊住宅地における住環境・景観保全のための高さ制限:横須賀市/芦屋市

10 地方都市における住環境・景観保全のための高さ制限:山形市/水戸市

第4章 高さ制限を活用したまちづくりに向けて

 

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高度地区の変遷について

2012年度の都市計画学会学術研究論文発表会で、高度地区の歴史に関する論文を発表します。

タイトルは、「高度地区指定による高さ制限の変遷に関する研究」です。

 

■高度地区制度とは?

高度地区制度は、建築物の高さの最高限度や最低限度を定めることができる制度で、都市計画法・建築基準法に基づく制限手法です。

用途地域では、低層住居専用地域(高さ10m・12m)を除くと絶対高さ制限はかかっていないため、現行の用途地域を補完する役割を担っています。

この高度地区制度は、もともと1920(大正9)年に施行された市街地建築物法施行令に規定された建築物の高さの最低限度の制限に由来します。当初は、駅前等の高度利用が求められる場所での土地の有効利用や美観形成を意図して、一定以上の高さの建物を誘導する制度として始まりました。

1931(昭和6)年の施行令改正で高さの最高限度も定めることが可能となり、1938(昭和13)年の市街地建築物法改正によって、「高度地区」という名称で制度化されました。

その後、1968(昭和43)年の新都市計画法制定、1970(昭和45)年の建築基準法改正によって、現在の制度が確立され、現在では住環境や景観の保全・形成を目的として、絶対高さ制限や斜線制限を高度地区によって実施する自治体が増えています。

■論文の主旨

この論文では、1920年の制度創設から現在までの高度地区の法律上の位置づけや実際の運用がどのように変遷してきたのかを分析し、高度地区が時代によって、その目的や制限内容を変化させてきたことを明らかにしています。

論文については、下記のホームページで確認できます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/47/3/47_211/_article/-char/ja/

「高さ610m 幻の代々木タワー計画」について

今から約40年前に、2本の600m級タワーが計画されていたことは、以前「幻のタワー計画 高さ550mの正力タワーと高さ600mのNHKタワー」(2011年2月)という記事で触れました。

「幻のタワー計画 高さ550mの正力タワーと高さ600mのNHKタワー」 

 

この記事を書いた段階では、NHKタワーに関する情報が少なかったために、計画の詳細にはほとんど触れませんでした(1969年7月時点の発表では、NHKの敷地内に600m級の4本脚のタワーをつくるというもの)。

しかし、その後の追加調査で、この時点でNHKが発表した計画はまだ初期段階のものでしかなく、その後、高さ610mのタワーが代々木公園内に計画されていたことが明らかになりました。

しかも、構造設計は、高層建築時代を切り開いた武藤清東大名誉教授の武藤構造力学研究所が関わり、タワーの意匠は、ヨーン・ウツソンやオブ・アラップの助手としてシドニーオペラハウスの設計に従事し、帰国したばかりの三上祐三氏が担当していたことも分かりました(三上氏は渋谷の東急文化村オーチャードホールの設計者でもあります)。

詳細については、AERA(2012年7月16日号)に掲載されましたので、こちらを是非ご覧ください。

○幻の代々木タワー計画(編集部山下努 東京工業大学大学院大澤昭彦)

ちなみに、610mという高さは、電波送信の技術的な観点から決まったそうなのですが、610mは語呂合わせでムトウ(6・10→ム・トウ)とも読めるため、武藤清の名前から高さが決まったのではないかと妄想してしまいました(この説は全く根拠がありません)。

分量が限られているため、すべてを盛り込むことはできませんでしたが、詳細な内容については別の形で公表をしたいと考えています(どういう形で公表するかは未定です)。

容積率制度の制定経緯について

先日発行された「土地総合研究2011年冬号」で、容積率制度の歴史的経緯に関する論文を執筆しました。

タイトルは、「日本における容積率制度の制定経緯に関する考察(その1) ―容積制導入以前における容量制限:1919年~1950年―」です(土地総合研究19(1)2011年冬号、p83-105)。

この論文は、1919(大正8)年の市街地建築物法(現在の建築基準法の前身)から1970(昭和45)年に現在の容積率制度が確立するまでの約50年間を対象に、建築物のボリュームコントロールに関する制度の変遷とその背景について整理、考察したものです。

3回に分けて掲載を予定しており、今回は、1919年(大正8)の市街地建築物法制定から1950(昭和25)年の建築基準法制定までを扱っています。

この時期には、まだ容積制が導入されておらず、主に絶対高さ制限に基づきボリュームコントロールが実施されていました。

しかし、この時代の規制内容は、後の容積率制度の内容に多大な影響を与えることから、詳細に整理しております。

その2では、戦後復興から高度成長期に向かう1950年代を対象に、絶対高さ制限の見直しや容積制導入に向けた議論が活発化していく過程を追っていきます。

さらにその3では、1961(昭和36)年の特定街区制度創設、1963(昭和38)年の容積地区制度創設を経て、1970(昭和45)年に容積制が全面導入されるまでの過程を見ていきます。最後に、容積率制度の制定経緯の整理から明らかとなった容積制の課題と今後の展望についてもまとめる予定です。

以下、論文執筆の背景を簡単に記しておきます。

 

■容積率制度が有する課題

容積率制限は、建築物の床面積と道路・下水道等の公共施設の容量との均衡を図ることを目的とした都市の密度規制の一手法で、1970年の建築基準法改正で現在の容積制の枠組みが確立されました。

しかし、ここ数十年に渡る容積率の規制緩和の結果、容積率はある種の経済価値を表す指標としての意味合いが強くなり、本来の目的を見失っているように見受けられます。

 

現在、国は「集約型都市構造の実現」を標榜し、いわゆるコンパクトシティを望ましい姿として位置付けているようです(国土交通白書平成21年度版)。

集約型都市構造を前提に容積計画を考えると、都心の密度を高める一方で、郊外部の容積を抑えることが必要です。

しかし、現実には、現状の容積率が既得権益化し、現状の指定容積率を下げることは難しいと言われています。

また、容積率の緩和制度が、周辺市街地の形態から大きく乖離した高層建築物の建設を可能とし、全国各地において建築紛争を招いています(高度地区や景観計画を活用した絶対高さ制限導入の動きは、こうした容積制の欠点を補完するための取り組みと言えるでしょう)。

その一方で、斜線制限や狭小化した敷地等においては、指定容積率が十分に消化できないために、都心の高密化が進まないという現状も指摘されています。

 

なお、容積率制度の課題については、西村幸夫・東京大学教授が、「都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ」(学芸出版社)の中で明快に整理されておりますので、是非ご参照下さい。

■人口減少時代に向けた容積制のあり方を考えるために

容積率制度自体は、市街地の拡大や人口増加を前提とした時代に作られた制度です。

本格的な人口減少社会を迎える今、容積率制限はどうあるべきなのか、その必要性も含めて議論をする時期にあると思われます。

容積制のあり方、ひいては市街地の形態・密度のあるべき姿を考える前提として、現在の容積制が成立した背景を再確認する必要があるのではないでしょうか。

今回の論文がその一助となれば幸いと考えております。

 

【追記】論文のPDF版を土地総合研究所のホームページから見ることができます。下記URLからご覧下さい。

その1:http://www.lij.jp/html/jli/jli_2011/2011winter_p083.pdf

その2:http://www.lij.jp/html/jli/jli_2011/2011summer_p046.pdf

なお、その3については執筆中です。

その1からその3までの内容は、拙書「高さ制限とまちづくり」の「第1章 高さ制限の歴史的変遷」の中でもまとめています。

よろしければご一読ください。

「高さ制限とまちづくり」学芸出版社、2014年

 

土地総合研究2010年夏号が出ました

土地総合研究所の季刊誌「土地総合研究」の夏号が発行されました(夏はもう終わりましたが)。

旧国土庁土地局長経験者による座談会をはじめ、充実した内容になっておりますので、是非ご覧下さい。

私も下記論文を執筆しております。

高度地区の緩和措置を活用した大規模建築物の規制・誘導に関する研究 ~裁量性を有する協議調整型まちづくり手法としての可能性~

京都市における高度地区を用いた絶対高さ制限の変遷 ~1970 年当初決定から2007 年新景観政策による高さ規制の再構築まで~

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土地総合研究2010年夏号(第18巻第3号) 目次

■座談会「これまでの土地政策と今後の展望」

藤原 良一(東日本建設業保証株式会社 相談役)

原 隆之(三菱地所投資顧問株式会社 取締役会長)

生田 長人(東北大学 名誉教授)

内田 俊彦(司会:国土交通省土地・水資源局 総務課長)

■寄 稿

○不動産バブルとマクロ経済

井出 多加子(成蹊大学 経済学部 教授)

倉橋 透(獨協大学 経済学部 教授)

○失われた30 年―土地利用計画転換の遅れがもたらしたもの―

山﨑 朗(中央大学 経済学部 教授)

○戦後住宅税制史概説(第4回)―居住用財産の譲渡特例を中心として―

大柿 晏己(財団法人 日本住宅総合センター 専務理事)

○J-REIT における物件売買動向からみた昨今の不動産証券化市場の状況

齋藤 哲郎(財団法人 建設経済研究所 研究員)

○不動産PER からみた香港住宅市場の動向

石田 和之(徳島大学 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 准教授)

○都市計画及び開発の法における規制緩和―オランダの新たな環境許可―

フレッド・ホブマ(デルフト工科大学 建築学部 准教授) Fred Hobma   (TU Delft)

柴 由花(明海大学 不動産学部 准教授)

■研究ノート

○最高路線価で見る地価変動 1982 年から2010 年の最高路線価推移 ―拡大する較差―

草間 一郎((財)土地総合研究所 常務理事)

○豪州におけるグリーンリースの取組み

昆 信明((財)土地総合研究所 研究部 部長)

○まちづくり三法改正が大規模小売店鋪立地に与えた影響に関する基礎的分析

菅 正史((財)土地総合研究所 調査部 研究員)

○近年の景観訴訟事例にみる景観保護の論理

白川 慧一((財)土地総合研究所 調査部 研究員)

○高度地区の緩和措置を活用した大規模建築物の規制・誘導に関する研究 ~裁量性を有する協議調整型まちづくり手法としての可能性~

大澤 昭彦((財)土地総合研究所 調査部 研究員)

○京都市における高度地区を用いた絶対高さ制限の変遷 ~1970 年当初決定から2007 年新景観政策による高さ規制の再構築まで~

大澤 昭彦((財)土地総合研究所 調査部 研究員)

■講 演 録

○第153 回定期講演会 「再起動するマンション市場 ―都心回帰と再新価格化―」

角田 勝司(株式会社不動産経済研究所 代表取締役社長)

○第154 回定期講演会 「温暖化がもたらす新しい国際競争」

末吉 竹二郎(国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問)